ビルメンテナンス見積支援 自動面積計測による見積業務の軽減 700社の実績

IOTを活用し清掃作業を知識集約産業に変える

ビッグデータ分析・システム化による清掃作業の効率化

オフィスビルの清掃業は、同業者間の競争が厳しく、クライアント(企業)に提示する清掃料金は安くしなくては受注できず、そのしわ寄せは清掃員が吸収している。時給単価は法定最低賃金スレスレのため、若者の応募者は少なく、50歳以上の中高年者が主な労働力になっている。しかも、社会保険適用外のパートやアルバイトが8割以上を占めていて、交通費は自己負担というケースもある。

《オフィス清掃会社の採算構造》

清掃作業者の人件費+清掃経費……70~85%
会社の一般管理費……………………15~20%
営業利益……………………………… 5~10%

しかし、オフィス清掃の仕事は、1件あたりの利幅は低いものの、一度契約を獲得すると長期にわたり毎月の安定収入になるのが利点である。また、公立の役所、学校、文化施設など公的機関の仕事も多く、一般競争入札や公募の案件から仕事を獲得することができる。

このビジネスをさらに進化させていくには、労働集約的な清掃作業をできるだけ効率化させていくことがポイントになる。近い将来には、人間に代わる清掃ロボットが普及するかもしれないが、中小の清掃業者が導入するには高額であることがネックだ。そこで、前段階の実用的なソリューションとして、オフィスや公共施設の各地点がどのように汚れるのかをデータ収集・分析して、清掃の人員配置や作業時間を最適化するビジネスが登場してきている。

【データサイエンスで進化する清掃ビジネス】

清掃業界にビッグデータ分析の手法を取り入れているのが、サンフランシスコに隣接した、パロアルト市にある「Squiffy Clean」という新興企業だ。同社の創業者は、シリコンバレーの起業家が集まる「Hacker Dojo」という会員制共有オフィスに出入りをしていたが、メンバーが支払う月々の会費の多くがオフィスの清掃費に使われていることに関心を抱いた。Hacker Dojo
  http://www.hackerdojo.com/

定期的なスケジュールに従い、同じ場所を掃除するローテクな仕事でありながら、オフィス清掃には510億ドル(約5.2兆円)もの市場規模がある。これをテクノロジーによって進化させられないか?という着眼である。

同社では、清掃をする建物の700ヶ所以上(各部屋、シンク、トイレの便器まで)にデータポイントを設けて、各部がどのような頻度で利用され、どのように汚れるのかを分析して、汚れのひどい場所は時間をかけて清掃し、汚れにくい場所は時間をかけなくても済むようなアルゴリズムを開発した。

清掃員向けには、専用のスマホアプリが配布されて、各ポイントの清掃開始時刻、清掃にかかった時間、清掃後の画像データを送信するようになっている。そこから、データ分析に基づいて最適化された清掃プランが作成されるため、従来より少ない人数でも、効率的な作業をすることができる。清掃作業の人員を減らせる分は、1人当たりの労働単価を高めることが可能で、同社が清掃員を雇う時給単価は17ドルの好待遇になっている。

また、新規のクライアント(清掃を依頼したい企業)に対しては、ホームページからオフィスの面積を入力すると、蓄積されたデータからトイレやシンクの標準値を導き出し、清掃の見積料金が15秒で提示されるようになっている。それにより、営業マンがオフィスビルを回ってセールスしなくても、契約を獲得できるノウハウが構築されている。

Squiffy Clean社では、清掃現場から蓄積されるデータの分析から、さらに効率的な清掃方法を追求していくことを強みにしているため、現在は、商業オフィスビルの清掃に特化しており、小売店、レストラン、学校などには対応していない。 
(これからの進出は検討中)
Squiffy Clean
  http://www.squiffyclean.com/労働集約型の仕事を支援するIoTソリューションの未開拓市場ローテク清掃業界に導入するIoTソリューション家庭向けに“お掃除ロボット”が普及してきているように、業務用清掃ロボットの開発も進んでいる。清掃業界でも高齢化による人手不足を背景に、ロボットへの期待は大きい。

米国のロボットベンチャー企業、Brain Corpが開発した清掃ロボットは、カメラと人工知能によって、店内の歩行者や障害物を感知してぶつからないように床の清掃をすることができる。運転席はあるが、クラウドベースの「BrainOS」というオペレーションシステムにより、複雑な自動操縦をすることも可能だ。清掃を担当する各施設の間取りや巡回ルートは、クラウド側のサーバーで管理をすることで、遠隔からのリモート操作による無人清掃も実現できる。
Brain Corp
  http://www.braincorp.comBrainロボットの紹介映像
  https://youtu.be/BHuJkJt4ZSk

ただし、このような清掃ロボットは、初期の導入コストとメンテナンス費用の高さがネックになる。これまでの清掃業界で主力となっていたパート・アルバイトの人件費と比較して、ロボットを導入した時の費用対効果が高く、人間よりもハイレベルな清掃作業ができるようになるまでには、もう少し時間がかかる。

そのため、早期の普及が見込めるITソリューションとしては、Squiffy Clean社が着眼しているような、清掃現場を科学的にデータ分析するビジネスのほうが軌道に乗せやすい。どのようなデータを活用するのかは、技術やアイデアによって色々な切り口が考えられる。

たとえば、2005年創業の米Navizon(ナビゾン)という会社が開発した位置情報技術は、清掃業界での活用が期待されている。これは、オフィスビルやショッピングセンターなど屋内施設を訪れた人が所持する、スマートフォンの Wi-Fi機能を利用して、指定したポイントを何人が通過するのかをトラッキングできるものである。

同社が開発した専用のデバイス(Nodes:ノード)を各ポイントに設置することで、Wi-Fi機能がアクティブなモバイル端末を検出できるようなっている。さらにWi-Fiシグナルの強度によって端末の位置を推定する。

収集できるのは、モバイル端末の MACアドレス(個体の識別番号)のみであり、端末ユーザーの個人情報までは特定されないが、最近はほとんどの人がスマートフォンを持ち歩き、しかもWi-Fi機能はアクティブ(オン)にしていることから、公共施設の来場者数をカウントしたり、ショピングセンターの販売コーナー別に集まる人の数を収集して、マーケティングに役立てることも可能だ。

清掃業者は、このノードを施設内の各地点に設置することで、人の往来が多いポイント(=汚れやすい場所)をリアルタイムでモニタリングすることができる。 人の往来が多い場所は念入りに掃除をして、往来が少ない場所は簡易に済ませれば、同じ人員でも効率的な清掃作業をすることができる。Navizonの屋内位置情報部門(Accuware)
  https://www.accuware.com/展示会イベント会場の往来をモニタリングした様子
  https://youtu.be/WY_s6-WNZFU

Navizon社のビジネスは、通行者のスマートフォンを感知するノードを1台あたり数十ドルの料金でレンタルすることと、クラウドベースのデータ分析システムを提供する収益モデルを構築している。

施設内に設置するノードは最小のスペースでも5台が必要で、15~20メートルの間隔で1台ずつ増設していく。面積が広い施設では、貸し出すノードの台数も多くなるため、導入する施設が増えるほど月額レンタル料が積み上がっていく仕組みである。


                                                    (JNEWSより引用)

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