2022年4月6日
アパートやマンションを借りる時には、家賃の他に、管理費や共益費といった名目の費用が設定されていることが多い。これは、不動産業界の慣習として定着しているもので、明確な定義や取り決めがあるわけではないが、建物を維持していくには、共用部分(電気設備、屋根、外壁、廊下、階段、エレベーターなど)の管理や修繕にもコストがかかるため、それを入居者にも負担してもらうという考えに基づいている。自治体が“大家”の公営住宅でも、家賃に加えて共益費を徴収することは認められている。 《賃貸物件における「共益費(管理費と同義)」の主な用途》 ・共用部の電気料、水道料 ・共用部の水道料 ・ゴミ置き場、廊下、階段、駐車場などの清掃費 ・エレベーター、給水ポンプ等の保守点検 ・植え込み、専用庭の剪定 ・玄関自動ドアの保守点検費 ・防火、消防施設の保守点検費 国土交通省の統計では、日本には 1,800万戸もの賃貸住宅があり、それらすべてに管理コストが発生している。共益費の相場は家賃の 5~10%だが、空室にも実質的な維持コストはかかっている。 また、分譲マンションの数も全国で 約10万棟、540万戸があり、こちらも各マンションの管理組合が結成されて、住民から管理費が徴収されている。その相場は、マンション1戸の平均面積が70平米として、月額でおよそ1.2万円、年間で15万円前後になる。 このように、不動産物件を管理していくための負担は大きいが、やり方によってコストカットできる余地がある。管理費の実質的な原価となっているのは、設備の点検やメンテナンスのために訪問する、人件費のウエイトが高いため、それを遠隔からモニタリングできるようにすれば良いのだ。これは、IoT(Internet of Things)によるスマートホームの市場とリンクする。 スマートホームは、未来のマイホームとして期待されている分野だが、直近の実需が見込まれるのは、持ち家よりも、商用ビルまでを含めた賃貸物件のほうである。 米調査会社のカードナー社によると、IoTによってスマート化される一般住宅と商用不動産の市場規模は、2015年から2018年にかけて2~3倍に急成長すると予測している。建物内に設置したセンサーからデータをモニタリングすることで、水道光熱費や設備のメンテナンス費用を最大で30%削減できるとしている。